家族の介護で、要介護者であった父母と介護者の私が、険悪になった経験があります。
その頃の私は初めての介護、そして同時に病気で休んでいた家族を抱え、平穏な毎日からは程遠い人生を送っていたのです。
なので、父母の最期を穏やかに看取るような理想は打ち砕かれていました。ただ、そんな日々の中でも、私は必死に介護をしていましたので、介護自体に後悔は全くありません。精神面での後悔は大いにありますが。
家族の介護はとても難しいと思っています。
家族の介護で必要なのは、今思えば「傾聴」の姿勢や「ユマニチュード」だと思います。
介護は上手く行った、けれど心の面では介護された父母も、介護者の私もボロボロだった、そんな私が介護を振り返った今、それらが重要な理由を下記まとめてみました。世の中には色々な意見などありますが、実際に介護に疲れ果てた私の心の奥深くから思う事、体験談です。
要介護者への対応として気を付けるべき点
要介護者への対応として気を付けるべき点として、やはり一番に思い浮かぶのは「思いやり」です。介護は身体的な負担だけではなく、感情的にも辛いことが多いものです。自分のこともままならない日常の中、必死に介護をしていると、自分自身の心の声が出てきます。
「休みたい」「寝たい」「お風呂にゆっくり浸かりたい」
人として当然のように享受できるはずの時間が奪われる事で、不満がでてくるものです。介護事業者の方は時間のお仕事で働いていますが、家族の場合、24時間、殆ど休みなしになるのですから、辛く思うのは当然のことです。
その中で精神面での技術として覚えておきたいのは、「傾聴」や「ユマニチュード」だと思います。
「傾聴」の重要性
傾聴とは、意外とほわんとした認識しかしていない事が多いかと思われますが、ただ相手の話を聞くことではありません。相手の感情や思いを理解しようとする姿勢です。簡単なようで難しいです。特に要介護者は、自分の思いや不安を言葉にする機会が少ない場合がありますし、思うように生活できない不安や辛さから心が疲れている事が多々あります。そのため、しっかりと話を聞くことで、要介護者は「自分の存在が認められている」と感じることができ、心理的な安心感が得られます。
介護従事者の方なら出来ることなのかもしれませんが、身内の介護となるとなかなか難しいものです。しかしこれを知っていると知らない、実践できると出来ないでは、要介護者との関係は全く変わってきます。
「ユマニチュード」の重要性
ユマニチュードは、フランスで生まれた介護の技法で、「見る」「話す」「触れる」などの行動を通して尊厳を保ちながら接することを大切にします。下記Youtubeの動画を載せておきます。
このアプローチは「要介護者が大切に扱われている」と感じることで、信頼関係を築きやすくなり、ケアの質も向上すると言われています。病院でも看護師さんが時々このユマニチュードをしてくださっている事を見かけることもありました。しかし、何も知らない素人の私にとっては、それがユマニチュードだとは気づきませんでした。
その他の気を付けるべき点
要介護者への思いやりを持って対応するためには、以下のようなポイントも役立つかもしれません。
1.共感を示す
要介護者が不安や苛立ちを感じているとき否定せず、「そう感じるのね」と共感を示すことで、心を開きやすくなります。
2.適切な距離感
家族だからこそ、近すぎる距離感がストレスになることもあります。介護者も時間も体力も無理をせず、頼れるところはお金を払ってでも頼ることが大切です。介護者と要介護者はお互いに適度な距離を保つことが大切です。
3.感謝の気持ちを伝える
要介護者に対して「ありがとう」を伝えることも重要です。
要介護者は介護者にお礼を言ってくれるとは限りません。私も父母の介護でお礼を言われたことは一度しかありません。要介護者がお礼を言ってくれるのを待つ必要はありません。
こちらから(介護者から)お礼を言うことで、温かい関係が築きやすくなります。オムツ交換の時に、少し動いてくれるだけでも「ありがとう」と言ったって良いのです。
介護者が自分自身を責めない為に
1.介護者自身のケア
介護者が疲れてしまうと、適切な対応が難しくなります。休息やリフレッシュの時間を定期的に取り入れることが大切です。自分自身を大切にすることも忘れないようにすることが必要です。とはいえ、これもとても難しい事が多々あります。何とか頼れる人を探してください。頼れる人がいなかったら、誰かに話を聞いてもらうだけでも休息の時間となります。介護は、愛する家族のためであっても、負担が大きいものです。そうした中で、要介護者への尊重と思いやりを保ちながら接している自分に自信を持ってください。