筆者自身、少子化と高齢化が同時に進むことの重大さを味わいました。一人っ子の筆者の父母は、数々の病気を患っていました。また、筆者自身の家族も病気を抱え、在宅で仕事もしていました。そんな中、母が末期がんとなったのです。母の訪問診療(在宅医療)を受け介護をした日々は、一日中、寝る時間もなく、今日が何日、何曜日なのか?今何時なのかさえ分からなくなるほど、朦朧とした日々を送りながら在宅介護をしていました。
2025年問題という言葉をご存知でしょうか?
2025年には団塊の世代は75歳以上の後期高齢者となり2200万人になると言われています。なんと人口の5人に1人が後期高齢者となる計算です。また2070年には高齢者の比率は40%近くになり、また子供や働き手は減り、社会保障制度にも大きな影響を及ぼします。
少子化と高齢化が同時に進む日本では、お金の面でも、介護をする人材の面でも大きな問題を抱えています。高齢者を受け入れる病院や施設も足りなくなり、介護の人材も不足。そのため厚生労働省は、需要の増大に確実に対応していくための提供体制を、都道府県・市町村、関係団体が一体と なって構築してくことが重要と、在宅医療・介護の連携推進を平成23年度より進めてきました。ここ最近、街のあちこちに急激に在宅医療の診療所が増えてきたことに、お気づきの方も多いのではないでしょうか?
これに実際に対応していかなければならない高齢の親を持つ50代は、待ったなしで在宅介護をしなければなりません。筆者も80を過ぎた母が、すい臓がんと分かり、あれよあれよという間に訪問診療(在宅医療)となり、「介護のいろは」が全く分からないうちに、母のおむつ替えも覚え、痰吸引もできるようになり、母の場合には、あれよあれよという間に亡くなりました。
少し前までは、もう手を尽くすことが出来ない状態になっても、療養病院が受け入れてくれました。しかし今は、療養病院も、ホスピスも、ショートステイも満床で、順番待ちを強いられることが増えてきています。病院に入る事が既に難しくなってきています。
自宅での介護は、ある日突然始まります。他人ごとじゃない時代になりました。
何よりも問題なのは、その高齢者を看る子の数が足りない事です。筆者自身、一人っ子でしたので、有無を言わさず私が母を看る事になりましたが、子が二人いたとしても、遠くに住んでいる兄弟もいるかもしれませんし、いずれにしても昔の様に家族3世代で暮らしている訳でもないので、介護者が足りず介護者が疲弊していく時代がやってきたと思います。少子高齢化の時代、一人っ子をはじめとする介護者が一人である介護は、介護者にとっても被介護者にとっても大きなリスクを伴います。
最近読んだ記事で、とても共感した記事があります。
公的サービスをフル活用、子供は時間や手間をかけずにマネジメントに徹する 距離を置くことで良好な親子関係を維持
私自身、一生懸命親の介護をすることで疲弊し、母が亡くなる2週間前には、母との関係が悪化していました。私は母の介護をすることで精いっぱいで、母とゆっくり話をしたり、母の気持ちを汲んであげたりするような「娘としての時間」が全く取れなくなっていたのです。夜中にトイレやおむつへの排便などの介護で睡眠時間は細切れ、人間としての最低限の休息、睡眠すらない日々を送り、動けない母の介護は私の四肢の関節や腰の負担を大きくし、痛みが出始めても介護はしなければなりません。
食事をとる時間もなく、まともな食事もできません。そんな状態の中で穏やかな介護などできないのです。結果、母は私よりもヘルパーさんを可愛がるようになりました。ヘルパーさんはお仕事ですからお代金も貰えます。母の家から出れば、仕事は終わりです。娘の私が24時間付きっ切りで母を介護するのとは異なることは、年老いた病気の母にはそれは分かりませんでした。
それは私にとって必死さと辛さとが同居する日々となりました。先の記事にはわたしがとても共感する言葉が並びます。例えば
一生懸命親の介護をすることで、かえって親の介護では、子が寄り添って、手間も時間もかけて責任を持つべき――そうした考え方が当たり前と思っているなら、立ち止まって考えたい。使える制度をフル活用して、できる限り“プロである他人”に任せる。そんな「親不孝」に見える介護こそが、実は親にとっても子にとっても、望ましい選択肢である可能性が高いからだ。
厚生労働省が発表した最新の推計によると、16年後には65歳以上の高齢者の3人に1人が「認知症」か、その前段階の「軽度認知障害」になるそうです。その時、筆者の私も70才近く。我が息子と娘に私が母に対して味わったような辛さを与える可能性があります。
また、数年後の2030年には、仕事をしながら家族の介護に従事する「ビジネスケアラー」が約318万人になるのではないかと言われています。
私自身最初の介護も、父がスーパーで転んで大腿骨を骨折した日から始まりました。それは一人で買い物に行った日の事でした。親が元気だと思っていても、介護はある日突然やってきます。
今はお子さんを育てる年齢も上がってきていますので、今まで以上に「親と子供」両方のケアをする必要のある「ダブルケア」の時代がやってくるのです。
親不孝介護のススメ
NPO法人となりのかいご代表理事の川内潤さんは「親不孝介護」という考え方を提唱されています。
「公的介護サービスなどをフルに活用して、子が時間や手間をかけずにマネジメントに徹する介護のやり方です。他人からは“親不孝”に見えるかもしれませんが、むしろ距離を置くことで良好な親子関係が維持され、お互い穏やかに生活できる可能性が高まるのです」
一般的に、子が親の近くにいて面倒を見ることが「親孝行」と考えられてきたが、川内氏は共著『親不孝介護 距離を取るからうまくいく』などを通じて、それが誤った認識であると訴えている。
「子が親の近くにいると、自力でなんとか親の心身を衰える前の状態に戻そうとして、外部の力に頼れなくなる。そうすると子にも親にも大変なストレスがかかり、家族が衝突したり共倒れになったりする危険性が高まります。親への思いが強まって一生懸命に介護するあまり、子の生活が壊れ、ついには親に憎しみまで抱いてしまう。そうした“親孝行の呪い”を解くのが、親不孝介護という考え方です」
公的サービスをフル活用、子供は時間や手間をかけずにマネジメントに徹する 距離を置くことで良好な親子関係を維持より
何よりも、私たちの心と体が健康でないと、介護は出来ません。私たちはこれからやってくる超高齢化介護社会において、子供たちの生活を壊さないように自分の未来の準備をしていく必要があると思います。