長年、ご家族の介護を続けてきた方は、介護が終わっても終わりではありません。むしろ、その後に新たな課題が訪れることがあります。それは、
「介護経験者だから、また助けてくれる人。」
という周囲からの期待です。近所の方、知人、親戚…。介護に困っている人は、「あの人なら分かってくれる」と相談に来ることがあります。
もちろん、その気持ちはよく分かります。介護経験者だからこそ、不安や苦労が手に取るように分かるのです。だからこそ、放っておけず、また手伝ってしまう。しかし、ここには一つ、大きな落とし穴があります。
あなたは無料のヘルパーではありません
家族を介護してきた人は、多くの時間を介護に費やしてきました。自分の趣味を諦め、旅行を諦め、仕事を諦め、睡眠時間さえ削りながら、「家族だから。」という思いで支え続けてきました。
その時間は、決して戻ってきません。だから、介護が終わったあとまで、「経験者だから。」という理由だけで周囲の介護を引き受け続けてしまえば、自分の人生を取り戻す時間がなくなってしまいます。
あなたは、誰でも自由に頼れる無料のヘルパーではありません。
「助けること」と「背負うこと」は違います
介護経験者は、とても優しい人が多くいます。相手の苦しみが分かるからこそ、「少しだけなら。」「今回だけなら。」と思ってしまいます。
しかし、その「今回だけ」が積み重なると、再び介護中心の生活になってしまうことがあります。助けることは素晴らしいことです。
でも、助けることと、責任を背負うことは違います。ご近所さんなど、自分とは血の繋がっていない方などの場合は特に、それはその家族の方が担うべき責任。それまで、自分が引き受ける必要はありません。
境界線は冷たさではない
「断ったら冷たい人と思われるかもしれない。」そう感じる方もいるかもしれません。でも、本当の境界線とは、人を突き放すことではありません。
例えば、「できる範囲ならお手伝いします。」「行政や介護サービスも利用しながら考えてみませんか。」そんな言葉でも十分です。
すべてを引き受けなくても、人を思いやることはできます。境界線とは、
自分と相手、どちらの人生も大切にするための線 なのです。
あなたの人生を、もう一度歩き始めましょう
介護を終えたあなたには、これから取り戻してよい時間があります。
ゆっくりお茶を飲む時間。
好きな本を読む時間。
旅行へ行く時間。
新しい仕事に挑戦する時間。
そして、家族ではなく、自分自身のために生きる時間です。長い介護生活を終えたあなたは、十分に頑張ってきました。
だからこれからは、「助けることはする。でも、自分の人生まで差し出さない。」そんな新しい生き方を選んでもいいのです。
それは決して冷たいことではありません。これから先も、無理なく誰かを思いやり続けるために必要な、優しさの境界線です。
あなたの人生を、もう一度歩き始めてもいいんですよ。


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